| 悪徳商人 I の懺悔ストーリー part1 実名は少々問題がある…ということで、 登場人物に関しては一部変更させて戴きます。 27期のあなたなら、きっと誰か分かるでしょうから。 |
私、商人 I は懺悔しなければならない。
若気の至りとはいえ、高校時代に、してはならない卑劣な行為をしたからだ。
それは…
青陵27期のアイドルと言える美女は誰だ?と尋ねれば、
まず筆頭は「千夏ちゃん」であろう。
部活動であるハンドボールが、彼女と一緒になったのが悪行の始まりだった。
彼女は確かに高嶺の花、学年や学校を越え、近隣校にもその名が
鳴り響いていたのは御存知の通りである。
部活動を終えたある日、ハンドボール・コートから出て部室へ向かう途中、
他のクラブの先輩Aが、目立たないながらも確実な視線を
彼女に向け送り続けているのに気づいた。
この人も我らがアイドルに気があるんだな…と、
その伏し目がちな視線に哀愁を覚えた。
と、ハンドボール・コートにタオルを忘れていたので取りに戻り、
再度部室に向かうと、今度はまた違う先輩Bが、
まるで「千夏ちゃん」を頂点にして、先輩Aと二等辺三角形を描くように
視線を送っているのが分かった。
むぅ…この人気は、まさにアイドルよなぁ…と思いながら、
汗と埃の臭気漂う部室に入った。
狭く薄暗いブロック造りの部屋の中、
差し込む赤茶けた夕陽に浮き上がりながら、
2人の後輩が話し合っていた。
「200ミリより300ミリがえぇよ」
何の話か分からなかったので尋ねると、
写真部にも籍だけを置いているが、今度ある野球の試合を
撮ってくれと頼まれ、望遠レンズの話をしていたのだった。
ここに、3つの事象を結び付け、無を有にする魔法陣が
私の頭の中に生まれた。
即座に、後輩に向け、写真を撮り、必要な枚数を現像する事を命令した。
しかし望遠だと光りが不足がちな上に、
普段の練習中にカメラを使っていると目立つので、
大会など、試合の時にさせてくれ…と言う。
それで良しとして、ファンが喜ぶような写真を必ず撮れ、と命じた。
それからすぐに、二等辺三角形の一つの頂点に接近した。
「先輩、話なんじゃけぇど…」
「な、何なら」
アイドルに見とれていた先輩Aは、斜め後ろからの声に驚き、
振り向きざまに少し怒ったような口調で言った。
「いや、何ね…ハンドボール部の試合は、
今度から専属のカメラマンが付いて、写真を撮ることになるんじゃけぇど…」
「それで?」
と乗り出して来る先輩に向けて続けた。
「男子だけでのうて、女子も撮るんじゃけぇど」
「 … … 」
「一人ずつ撮っとったら、結構枚数がかさむけん、金がかかるんですわ。
で、必要な写真があったら、販売しようかと思っとるんですが…」
「だ、誰のでも売ってくれるんか」
「もちろんです。焼き付けの設備や望遠レンズを揃えるんで
ちょっと高めなんですけぇど、
2枚で千円ほど戴けたらOKなんですが」
と言うと先輩Aは二つ返事だった。良い写真ならもっとはずむとも言った。
やった!と思った。
そして次の日には、先輩Bにも話を持ちかけ、承諾をとった。
これで、自分の目的であるレコード=ビートルズのラバー・ソウルが
買えるとほくそ笑んだ。
しかし、後輩の出費である印画紙代なども何とかしてやらなければ…と
思っていた矢先、先輩Bが、同じ物を3部焼いてくれないかと
言ってきた。その条件として、1部を700円に負けろ…と言うのだ。
やった!合計四部を焼かせて収入3100円、
後輩に1100円を渡して、自分が2000円を着服、
ラバーソウルを買う…という計算式が見事に成立した。
魔法陣から、ベルゼベルは飛び出したのだ。
そして、仕上がった写真がこれである。

乱れ髪、おでこの汗のしぶきが、こちらに飛んで来そう。
熱気が、埃が、切ない思いが、青春の1ページが…
ここにはある。
… … …
さて、思い通りに金をせしめた私・商人 I は、午前中だというのに
トミヤマに走り、目的のレコード=ラバーソウルを手に入れた。
その日は昼から練習で、自転車の前のカゴにレコードを入れたまんまだった。
トミヤマの袋は黒のビニール、強烈な夏の日射しは、容赦なく降り注いだ。
4時頃に練習が終わり、家に帰り、ターン・テーブルの上に置くと
レコードがしなっているように見える。
クーラーを付けて、部屋の温度が下がると、
レコードの曲がりは顕著になり、見事にお椀型になり、
ジョンやポールの歌声は、不必要にワウワウと唸り、
とても聞けない状態になった。
悪銭は身に付かないものだった。
ベルゼベルは、悦楽と同時に落胆を間違いなく与えて行った。
そして「千夏ちゃん」に隠れてこんなことをした…という
後ろめたさだけを抱え、26年も過ごすことになったのである。
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