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1 Aug
, 2002
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Nr.021 水江のはっさん

その1 はっさんはアラビア人?


 
小学校から中学校に進学したばかりの私は、疎外感と孤独感を感じずには居られなかった。
なぜなら、私の通った西小学校は、3つに分断され、バラバラになって中学校へ通う事になるからである。

教室の中では、同じ小学校の出身者は、他に一人いるか居ないか…である。丸ごと中学校へ入ってくる中州と老松…という2大勢力の狭間で、肩身の狭い思いをせざるを得ないのだ。

何とか、それらの出身者に溶け込もう…
と、彼等の行動を目を皿にして観察し、話している話題をウサギの耳にして聞いていた。しかし、中学生になったばかりの同世代、内容も、面白がっている事も大体同じだという事が分かってきた。

これなら溶け込むのは簡単だ…と思い、少し自信が出てきた。しかし、ある日、中州小学校の出身者が、訳の分からない人物の名前を口にした時から、その自信が一挙に揺らぐ事になってしまった。

それは、「水江のはっさん」という言葉なのである。これは、今までの自分の持っている語彙には、無いものだった。良く聞いていると、老松小学校の出身者は、殆ど口にしない。つまりは、中州地区だけの特別な言葉らしい。

これを聞いた私は、水江に「はっさん」という人物が住んでいるのだ…と判断するしかなかった。しかしながら「はっさん」は日本人を呼ぶニックネーム…とだけ、単純に解釈してはならない、と感じた。なぜならアラビア方面の人で、アブドル・ハッサン…という名前は結構ポピュラーだからである。

何よりも、この「水江のはっさん」は、怖い時、あるいはびっくりした…という感情の動きと共に登場するのが間違いなく感じ取れた。

つまり、普通の日本人で、ニックネームが「ハッサン」という人物が居たとしても、余程凄まじい人でなければ、これほど有名になるはずはない。またそんな大人物なら、中州地区からさほど離れていない自分の家の周辺でも一度ぐらいは聞いた事があるはずである。
だから多分、日本人ではないだろう…と思った。

が、水江という部落の中に、アラビア人のハッサンが居れば、「インド人もびっくり」ではないが、これは充分、驚きに値する。当時は、倉敷に外人さんは珍しいから余計である。

私は、これに違いない! と思いながらも、それでも確信が持てなかった。だから、中州小学校出身である、同じクラスの気の弱そうな人物に聞いてみた。

「なぁなぁ、水江のはっさん…って言ぅたら、何なん?」

聞かれた人物は面食らったような顔をした。

まるで、それを聞かれて、嫌な所を探られた…というような顔をしたようにも感じた。
私は、いけない事を聞いてしまったのか…と後悔した。




by アルケミー・えんしゅう


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