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__ | ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ | ▲top page Nr.007 種松山周辺 粒江 倉敷の南に位置する種松山、その東北の麓に、粒江(つぶえ)と呼ばれている場所がある。この地のある新興住宅の一角の数軒の住人が、非常に高い確率で金縛りに遭遇していると聞いた。 “金縛り”は、精神的な部分が大きいので、眉にツバをつけようとしたのは私だけではないだろう。しかしこの住宅9件を1ブロックとして考えた時、8/9の確率で、金縛りが発生しているのだ。家によっては、三人以上が経験している。この確率は、どうやら普通ではないと感じられる。 さらにこの住宅ブロックの半数以上が、深夜、家の周囲を歩く足音を聞いている。この現象もまた、余所から人が入って来ていたり、近所の不良が悪さをしていたりということも考えられる。が、この住宅ブロックは通り抜けのできない袋小路であり、他人が入って来る可能性は非常に薄い。入ったとしても袋小路に気付いて、すぐに出ていくのがお決まりのパターンだと言う。いや、足音を空耳であると判断して、普通ならばそれほど問題にするべきでは無いのかも知れない。 しかしこの住宅の中の、ある一軒の御主人さんが、明かりを消した部屋の中にいた時、ちょうど窓の外を足音が通り過ぎた。気丈夫なこの御主人さん、その音を追うようにして窓は閉めたままで、カーテンの隅を少しだけめくった。不良などが隠れてタバコでも吹かし、火事になってはという気持ちだったという。 外を覗くと確かに足音が残る辺りに、一つの人影らしきものがある。暗くて良く見えないのだが、何かが背を向けて歩いて行く。背丈が異様に高い…というよりも、頭に何かを載せている。さらに横幅もかなりあるように見える。 徐々に目が慣れていき、薄っすらとシルエットが見える。身に纏っているものから、歩くたびにカタカタとかジャラっというような、何か固いモノが擦れ合うような音が聞こえている。それは、現在の洋服や装飾品から発生するとは考えられない音である。微妙に揺れ動くその外装を凝視していると、ダンボールを纏ったプー太郎さんのようにも見える。しかし、その人物が最初に見えた場所より遠ざかっており、また外は暗い上に霧が出ており、はっきりと確認できない。 どうやら背に棒か筒のようなモノを背負っているのが見える。これは一体、何者?…と固まったこの家の御主人さんの手前から、次なる音が近付いて来た。同じ方向からやって来る。窓の側を通り過ぎる時、今度は間違いなく見た!肩からぶら下がるのは射向けの袖、腰をプロテクトする草摺り、足にはスネ当て、大きな頭は兜と顔の横には吹き返し。背中の棒のようなモノは矢の筒、肩には弓を通している。 先程の人物と、同じ方向へ背中を向けて進んでいく。その先は、倉敷川と吉岡川の交点、流域面積がぐっと広くなる場所。いや、もしかするとそれより先の源平激戦地。それとも荒ぶる神スサノオを祭る神社に向けてかもしれない。そして、この家の御主人さんの視野から、薄っすらとモヤのかかる中に、とろけるように消えていった。 粒江から藤戸にかけて、霧が多く発生する。特に霧が深い夜、その中から現れてその中に消えていく‥そんな甲冑武者の姿が見えることがあると言う。やはりこの地は“つわものども”が夢を見た跡なのかも知れない。 by アルケミー・えんしゅう |
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